研医会通信  233号 

 2024.09.25

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研医会図書館は近現代の眼科医書と医学関連の古い書物を所蔵する図書館です。
この研医会通信では、当館所蔵の資料をご紹介いたします。

今回は 『病名纂』です。

 

 『病名纂』 上下巻1冊 丹波元簡: 輯 

 今月は丹波元簡の『病名纂』をご紹介します。この本については第114回日本医史学会で、竹内尚氏が発表しておられます。この抄録によれば、3,632の病名がとりあげられている本で、上下巻が一冊にまとめられた写本です。現存している本はすべて筆写本であるということで、研医会所蔵の本も59丁の写本です。 いろは順に病名を挙げ、その病名が取り上げられている文献名を小字で付すという体裁になっており、所蔵の本は丁寧な細筆で書かれています。最初のぺージには「加藤薬室」の角印があり、巻末にも「加藤薬局出」とあります。 

  今でも医学の言葉は難しい漢字のものが多いのですが、ここに挙げられた病名も難読のものがたくさんあり、単語を見ただけでは現代でいう何の病気かわからないものが列挙されています。私の理解できなかったものをいくつか挙げますと、「角弓反張」「瘕蟇病」 「走馬風」「枯筋箭」など、残念ながら、いくらでも見つかります。お医者さん向けのクイズの出題にはよいかもしれません。 

  西洋医学を受け入れるようになってから、漢字の医学用語を創り出してきたのは日本人だ、という話を聞いたことがありますが、単に思いつきで創り出した訳ではなく、この本にあるような中国医学の長い歴史を学んだ上で、新しい単語を生み出していったのではないか、と感じました。

第114回 日本医史学会 演題49 竹内尚氏の抄録  http://jshm.or.jp/journal/59-2/59-2_229.pdf

 

   図1  『病名纂』表紙

 

   図2 同本の巻頭

 

   図3 下巻の最初 「く」から始まる。

 

   図4 落語で有名な「転失気」も書かれている。ただ、文字は失ではなく、矢となっている。